アンドロメダ 

空を見上げると、無数の星が瞬いている。 今日も一日、終わったなあ、と私はつっかけの先をつま先で弄びながらぶうらぶうらと歩く。 私の趣味は、こうして一日の終わりに家事が一段落してから外に出て空を見上げることだ。 朝は小学生の子供たちと主人の出かける支度に追われ、昼間はパートに追われ、夕方も食事やお風呂や家事に追われ、ちっとも自分の時間など持てない主婦。 やっとこの時間になって一息つけるのだ。 それは幸せの証。 何億光年か遠くできらめく星の光は、ちかちかとそれを教えてくれる。 ふう、と息を吐くと、それは白く舞い上がり、夜空へ吸い込まれていった。 もうそんな時期なのか、と自分の薄着に苦笑を漏らす。 私は、早々に今日は引き上げようかと自宅の方を振り向いた。 すると見覚えのある陰が近寄ってくる。 最近少し横幅にゆとりが出てきた主人だということはすぐに分かった。 「どうしたの?」 私は訝しげに聞いた。この人が夜に家から出るなんてこと、めったにない。 いつもお風呂に入った後はビールを飲んでそのまま寝てしまうのが定番なのに。 「いや、みきちゃん、寒いんじゃないかと思って」 ”みきちゃん”だなんて何年ぶりかに呼ばれた気がしてしばらくぽかんとしてみた。 すると、主人はぼうっとする私の目の前にカーディガンを突き出した。 「着なさいよ。ちょっと、コンビニまで歩こうか」 そのままカーディガンを私に押し付けると彼は黙って歩き始めた。 慌ててそれを羽織って彼を追いかける。彼は私が追いつくのが分かると、少し歩調を緩めた。 「みきちゃん、今日は星が綺麗だよ」 ゆっくり歩く私に合わせる彼。 そうだ。付き合い始めた頃の何十年か前の彼の、そんなところが私は好きだった。 「そうね。今日は格別」 私はそっと彼の手に私の手を絡ませた。彼は「やめなさい、恥ずかしい」と言いつつも、振りほどきはしない。私はそのまま歩き続ける。 私と主人の目に、輝く銀河が映っている。 aikoの曲名で10のお題に戻る アンドロメダは単なる星座の名前って感じで読み取りましたけど、 事実、あの歌は何で『アンドロメダ』なんでしょうか? 冒頭の歌詞のところからなのかなぁ? 将来、旦那には子供のいるとき以外では名前で呼んで欲しいなー。 今は当たり前にそうなんだけど、 その内「おかあさん」「おとうさん」になりそうでしょ…。 私は子供の前ではそう呼んでも、二人のときは当然名前だわって心に決めてます。  








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