(大分本編とは違い、ゆる〜い感じでお送りしております。クリフト→女勇者です)





き み の ひ と み と お な じ い ろ











「うわー!やっぱり海は広くて気持ちがいいー!」
エッダは海が好きなようだ、とクリフトは感じていた。
船旅に出ると、いつも何故か機嫌がよく見える。
にこにこと微笑みながら、跳ねる魚を見ては、はしゃいで見せる彼女から、クリフトは目を離せないでいた。
正直なところ、クリフトにとってエッダは、いつもどこか影のある少女のようで、近寄りがたかった。
目的が重なり、一緒に旅をすることになって、まず初めに驚いたのは実年齢の割りに、大人びていたところだ。クリフトよりも年が下で、自分が仕える主君であるアリーナと変わらないはず。それなのに、今のようなはしゃいだところはちっとも見たことはなく、今まで、そのアリーナや、彼女の周りにいた女性をその年頃の女性の基本として見てきたクリフトにとっては、それは驚くべきことに値したのだった。それ故に、どうやって接して良いかは分からず、自分からは特に用事が無い限り、話かけずにいた。エッダの方も、他のメンバーとは談笑することもあったが、彼女自ら進んでクリフトと喋ることはなかったので、クリフト自身も距離を測っていたというのが本音だ。
それが、どうだろう。船に乗るたびに、無邪気に海を喜び、今は輝かんばかりの笑顔で、細い腕を甲板から海上へと突き出しているエッダ。
そんな彼女を見るとクリフトは無性に嬉しくなり、その唇を滑らかにさせていた。

「海がお好きなんですね」

え?と声を出しながらこちらを振り返ったエッダは軽く驚いたように目を開いた。が、すぐにそれははしゃぐ自分を恥じ入るような微笑へと変わる。
「うん、今まで見たことなかったし、話に聞くだけだったから。本当にこんなに水がたくさんあるんだなって思ったら、ちょっと感動して。だから海に出ると、何だかわくわくするの」
頷きながら、クリフトは船べりに腕を引っ掛けているエッダの隣へ立つと、同じようにへりへ肘を乗せた。それを見るともなしに、エッダは体はそのまま、顔だけクリフトの方を向ける。
「クリフトたちの国は、海、近かった?」
強い潮風にあおられる、緑色の髪を頬から掻き上げながら、エッダは尋ねてきた。その髪は太陽の日差しに透けて、まるでエメラルドのように輝くので、クリフトは思わず目を細め、見据える。ふと視線を絡ませると、エッダの瞳の色の深さに魅せられた。その中に懐かしい想い出を映す。
「ええ。幼い頃には泳ぎにも行くこともありました」
記憶を思い返すように視線を上のほうへずらしたクリフトを見上げたまま、エッダは大きく頷いてみせている。
「そうなんだ。いいなぁ。私も海で泳いでみたいわ」
本当に羨ましそうな表情を浮かべ、エッダはまた海上へと顔を向けた。なぜそんなに海を好きなのか。素朴な疑問を抱きつつも、クリフトはエッダの羨望の色を変えてみたくて、口を開く。
「じゃあ、近いうちに皆さんで海水浴などどうでしょうか」
「素敵!」
エッダはそう言うと、瞳を文字通り輝かせ、掌を打ち合わせてみせた。ふふふ、と笑い声が漏れ、緑の巻き毛がふわふわと揺れている。
思った以上に嬉しそうな様子のその仕草を見て、何だ、普通の女の子ではないか、と何故かクリフトは安堵する心地を覚える。それと同時に、もっと彼女のことを知ってみたいという欲求がふつ、と心の内側に滲み出してきたことを何となく、感じ取った。心を動かされるというのはこういうことなのか、と思う。
それが恋であるか、単なる興味なのかという境界付けは、彼自身にはまだ判別どころか、意識の範疇にさえ存在していなかった。





クリフトはエッダと出会った頃のその会話を思い出していた。
あれから本当に海水浴へは、まだ行っていない。多分、これからもこの冒険中に皆で行くことなど出来ないかもしれない、とそう思う。
それでも、エッダだけは、海の水で泳がせてみたかった。きっと、当に水を得た魚かというほど、楽しげに腕や脚を振り回すのだろう。情景が目に浮かぶようだ。そうしてはしゃぐ彼女を今一度、見てみたかった。
もし、何もかもが終わってみたら。
あの日の約束を守らせてくれ、とエッダに言ってみようとクリフトは静かにその心に誓った。







I have not seen you lovely so much up to now.
I will surely fall in love with you because of that.



女勇者がすごく好かれるところがみたいのー。
愛されるところがみたいのー。
恋におちられちゃってるところがみたいのー。
と思い、自家発電です。
「月夜の告白」以前の出来事のようである、と思ってください。
クリフトが何となく、エッダを意識の端で気にかける出来事、というのがこれであって、
それから深夜に宿から出るエッダを追いかけてみたり、ブライに文句垂れられつつもお話できてうれちい、とか思ってたりするクリフトへ進化してゆくのです。
それと、基本的に愛され系な女勇者ちゃんだと思っている。じゃないと、皆ついていけないんじゃないだろうか。特に女の子の勇者さまだもの。

ああ、どなたか愛され女勇者たん、書いてくださらないかしら。
萌えが…足りないよー。
あ、あと英文は雰囲気で書いてみたので、何か変かもしれませんがスルーでお願いします…。


読み物メニューへ index